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COLUMN

交通事故 損害賠償


 

示談後の悔し涙 (4/7)

― 自賠責基準と弁護士会基準 ―

 なぜこういう事態が生じるか。
 それは賠償金の基準が2種類あり、そのことが世間に知られていないからです。
 2種類とは自賠責基準と弁護士会基準です。自賠責の基準はかなり低く、弁護士会の基準はそれに比して相当高くなっています。
 ちなみに任意保険でもむかしは査定基準を設けていましたが、各社横並びに一定基準で査定するというのは、独占禁止法に違反するのではないかという問題が浮上しました。このため、現在では任意保険としての全社一律の基準はなく、ケースバイケースで各社が査定しています。 といっても、損保や共済は各社ごとに独自の任意保険基準を設けているようですが。
 任意保険の査定の実情をみるかぎり、慰謝料などは自賠責基準と弁護士会基準の中間値をとるか、どちらかといえば自賠責基準寄りの数値をとることが多いように感じます。
 ここでいう弁護士会基準とは、「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(通称「赤本」の基準)と「交通事故損害額算定基準」(通称「青本」の基準)です。東京地裁交通部(民事第27部)の見解は、「赤本」に反映されています。裁判外でも、「青本」より「赤本」の方が実務の準則として活用されている印象があります。
 たとえば、入通院慰謝料を例にとってみましょう。被害者が1か月入院し6か月通院した場合と、3か月入院し12か月通院した場合、入通院慰謝料はそれぞれの基準で以下の別表Tのようになります。

入通院慰謝料についての対比【別表T】
入通院期間 自賠責保険の基準 弁護士会の基準
被害者が1か月入院し6か月通院した場合
\882,000以下
(1日当り\4,200、合計約210日以下)
(注) 現実には、治療期間の範囲内で、入院日数30日プラス実通院日数の合計日数を2倍した日数分ぐらいしか、認定されないケースが多いように思います。その結果、実際の支給額は上記の上限額をかなり下回るでしょう。自賠責保険・傷害分の残余額が少ない場合には、その残余額が上限となります。
通称「赤本」では\1,490,000

通称「青本」では\1,000,000
〜\1,840,000
被害者が3か月入院し12か月通院した場合
\1,200,000以下
(1日当り\4,200、合計約455日以下)
 計算上は\1,911,000以下になるものの、自賠責保険・傷害分は\1,200,000が限度額ですから、最高でも\1,200,000以下。(注) 現実には、治療期間の範囲内で、入院日数90日プラス実通院日数の合計日数を2倍した日数分ぐらいしか、認定されないケースが多いように思います。その結果、通院期間が長くても実通院日数が少ない場合、または治療費など他の項目での支給がすでになされ、残余が少ない場合、実際の入通院慰謝料の支給額は自賠責保険・傷害分の限度額\1,200,000を大幅に下回ることになるでしょう。
通称「赤本」では\2,360,000

通称「青本」では\1,580,000
〜\2,910,000
(注) 自賠責保険の基準は2002年4月1日以降に発生した事故に適用。

 後遺障害慰謝料をみてみます。後遺障害等級が4級、8級、14級のケースで、それぞれの基準額を比較しますと、別表Uのようになります。

後遺障害慰謝料についての対比【別表U】
後遺障害等級 自賠責保険の基準 弁護士会の基準
4級 \7,120,000 通称「赤本」では\16,700,000

通称「青本」では\15,000,000〜\18,000,000
8級 \3,240,000 通称「赤本」では
\8,300,000

通称「青本」では
\7,500,000 〜\8,700,000
14級 \320,000

通称「赤本」では
\1,100,000

通称「青本」では
\900,000 〜\1,200,000

(注) 自賠責保険の基準は2002年4月1日以降に発生した事故に適用。
 
 弁護士会の基準の方が、自賠責の基準より格段に高いことがおわかりいただけると思います。
 被害者は加害者にどの基準で請求できるか。
 もちろん弁護士会の基準による額です。被害者の交渉相手が加害者本人ではなくその任意保険会社であったとしても、弁護士会の基準で損害額を請求していっこうに構いません。

 被害者本人が弁護士会基準で任意保険会社に賠償金を請求しますと、任意保険会社ではしばしば次のようにいいます。

 「弁護士会の基準を適用するのは、裁判になったときとか、被害者の方に弁護士がついたときです。裁判になったり弁護士をおつけになったときは、それなりに経費がかかりますから高い基準を使います。それにひきかえ、いまはまだそうなっていないのですから、当然経費はかかりませんよね。だから弁護士会の基準ではなく、当社独自の考え方で算定させていただいたのです」

 これは詭弁です。任意保険会社が保険金(賠償金)の支払いを安く抑えたいために考えだした理屈です。弁護士会の基準で算定した金額から弁護士に頼んだ場合の弁護士費用や諸経費をさしひくと、任意保険会社の査定額になるかといえば、そうはならないからです。査定額より概して高くなります。
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