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COLUMN

 

示談後の悔し涙 (3/7)

― はめられた! ―

 T損保が「今後のお支払額469万円」と記載している明細書のなかで、明らかに金額を低く見積もっている項目が3つあります。入通院慰謝料、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料です。
 息子さんは2年8か月余りも治療をうけました。入院は2か月半、実際に通院した日数だけでも約200日になります。これだけ長期の治療を要した場合、入通院慰謝料は170万円から200万円は認められるべきですが、T損保では140万円しか認めていません。
 後遺障害逸失利益というのは、後遺障害があるために労働能力が落ち、そのために予想される減収のことです。後遺障害等級12級の場合には、労働能力は健康時より14%衰えるとみるのがふつうです。月収100万円の方であれば、86万円しか稼げなくなり、14万円収入が減るということです。このパーセンテージを労働能力喪失率といいます。後遺障害等級14級の場合には、労働能力喪失率は5%とされています。息子さんの場合には、後遺障害等級が12級でしたから、労働能力喪失率を14%として計算すべきであるのに、T損保では14級相当の5%で計算しています。逸失利益を意識的に、不当に低く見積もったのです。
 後遺障害の慰謝料の算定にも問題がありました。12級の場合、東京三弁護士会の基準によれば、後遺障害慰謝料として270万円から290万円は認められるべきものです。ところがT損保では129万円しか認めていません。われわれ弁護士が被害者サイドにたって考えた場合、この金額は低すぎます。弁護士会基準の半分以下にすぎません。
 T損保がだしてきた算定額と私が計算しなおした額とを対比しますと、以下の「損害額対照表」のようになります。

損害額対照表
損害項目 T損保 筆  者
(1)入通院慰謝料 \1,400,000 \ 1,700,000〜\ 2,000,000
(2)後遺障害逸失利益 \2,200,000 \ 7,180,000〜\10,040,000
(3)後遺障害慰謝料 \1,290,000 \ 2,700,000〜\ 2,900,000
(1)(2)(3)合計 \4,890,000 \11,580,000〜\14,940,000
上記(1)(2)(3)のほか治療費、休業損害など、すべての損害を合算した金額より15%過失相殺して、既払金を控除した金額 今後の支払額として、\4,640,000を提示 今後の支払い額としては、最低\10,000,000以上が妥当

  「500万円の示談金はあまりにも安すぎます。本来の額の半分にすぎません。1000万円もらってもおかしくはなかったでしょう」

 T損保の算定と私の算定とを対比したメモ書きを彼に渡したところ、彼は愕然としました。
 T損保の担当者は、賠償金の相場を知らない被害者の無知につけこんで、彼をだましたのです。おそらくT損保の担当者や上司は、464万円という提示に対して、彼から「500万円にしてくれませんか」という要求をうけたとき、内心ほくそえんだことでしょう。弁護士が介入すれば1000万円払わされるところを、500万円で被害者がOKするといってくれたのですから、渡りに舟と考えたにちがいありません。
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